【Engine Oil】ありそうでなかったオイルをつくる。Supernova by Lubross

今回は久々にオイルの話。オイルの話といえば、前回もご登場いただいた「ルブロス」の永野さん。何やら新しいオイルをつくろうという話が持ち上がっているらしく、おもしろそうなので首を突っ込んでみました。

 

 

 

――5月某日 某洋食店にて。

ルブロスの永野さん、RENOの鈴木さん、Tさん(RENOさんのお客さんであり、今回の主役)、森田の4人でカレーを食いながら会談。

オイル屋としては「もたない」と言われるのが

いちばんショックなんですよね(笑)。

――Nagano

 

Morita:オイルをルブロスさんにつくってもらおうという話、そもそもきっかけは何だったんですか?

Suzuki:Tさんはオイルにこだわりがあって、以前もYACCOのギャラクシーGTとか使ってくれていたんだけど、ある「Z」というオイルを1回入れたらしく。ただ、それが少し自分に合っていないかなと思ったようで、じゃあ次は何にしようかと悩んでいたんだよね。で、その話を永野さんに話したら「そんな生きのいい若者がいるなら、一肌脱ぐか」となって。1回膝突き合わせて話さないといかんねってことになって、今日になったと。

Morita:Tさんはクルマ、何乗ってるんでしたっけ?

Tさん(以下、敬称略):ルノー・ルーテシア2 RS(ph2)です。

Naganoさん(以下、敬称略):そのZというオイルはどうなんですか? どれくらい乗りました?

T:いま7,000kmくらいですね。

Nagano:けっこう乗ったね。

Morita:そもそもZってどんなオイル?

T:U社のTくらいのスペックで、それよりもちょっと安いオイルなんです。モータースとかそういうところにしか卸していないので、手軽に個人が買えるものではないようです。そもそものきっかけは、ツイッターでフォローしている人がいいよって言ってるのを聞いて興味を持ったんです。その人はモータースの息子さんで、店でも扱っているようなので、静岡県まで行って入れてみたんです。

Morita:実際どうでした?

T:そうですね。入れてみた感じはそれほど特徴がないんですよ。ただ、入れてすぐはエンジンも静かになったし、よく回る。

Morita:粘度は?

T:その前に入れていたのはギャラクシーGTで10W-60。Zオイルは5W-30なので、そりゃ軽く回りますよね。ただ、ギャラクシーと回り方が違うのは、下はよく回るけど、上がタレる感じ。6,000rpmを超えてからは、ちょっともたないなって印象でした。

Nagano:そのもたないってのが大事で、何をもってもたないと言っているのかを知りたい。オイル屋としては「もたない」と言われるのがいちばんショックなんですよね(笑)。回り方がザラついているとか、そういう感じ?

T:そういう感じもありますし、ギャラクシーは7,000rpmくらいまでスパッと回ったのに、6,000rpmより上の1,000rpmが辛そうな感じがするんです。ギャラクシーよりZオイルのほうが粘度が低いのに、それができていない。下はいいんですけど。

Nagano:それは交換直後から?

T:はい。

Nagano:いま7,000km乗ってみて変わった?

T:5,000~6,000kmくらいからよりザラつきが増えた感じがします。

Nagano:僕が想像するには5,000kmくらいまで変わらずで、その後だんだんうるさくなっていったんだけど、またフィーリングが戻ってきたような感じはしない?

T:極端に悪くなったとは思わないんですけど、良くなったとも思えないですね。

 

永野さんがいろいろできるよって話を聞いたので、

自分の好みのオイルがつくれるんだったら、

それにこしたことはないかと。 ――T

 

Morita:Tさんってクルマはどんなふうに使っています?

T:毎日の通勤20kmくらいと遠出。遠出は2週に1回ほどで、距離は片道200kmくらいでしょうか。峠道も好きなんで、けっこう走りますし、年に2、3回くらいサーキットにも行きます。じつは2週間前にもYZ走ってきたんですよ。そのときもZオイルが入っていたんですけど、YZ自体が初めてだったので、前と比較してどうかっていうのは分からないんですね。走ったのは15分を4セット。たださっき話したようなフィーリングがあるので、サーキットでもやっぱり値段相応なのかなと。
ギャラクシーは通常の通勤・遠出をしつつ、間にサーキット走行を挟んでも1万km弱まではフィーリングが変わらず乗れてたんですよ。5,000~6,000kmでフィーリングが変わっちゃうZオイルと、1万kmくらいまでフィーリングが変わらないギャラクシーとなら、費用対効果はあまり変わらないんじゃないかと。そんなに変わらないなら、気持ちよく乗れたほうがいいし。

Nagano:5,000kmで劣化したなと感じるなら、3,000kmくらいで本当は交換しないといけないオイルなんだろうね。ただ、ギャラクシーが1万km持つなら、Zオイルは7,000~8000kmくらいまではもってほしいね。

T:周りのZオイルユーザーも3,000~4,000kmで交換する人がほとんどなので、おそらくそういうオイルなんだろうなと。そのための価格設定でもあるだろうし。

Morita:既存のルブロスオイルのラインナップから選ぶことは考えました?

T:永野さんがいろいろできるよって話を聞いたので、自分の好みのオイルがつくれるんだったら、それにこしたことはないかと。ルーテシアの前にインプレッサに乗ってたんですけど、そのときにルブロスのオイルを入れたことがあって、Rスペックかな。10w-50を入れていたんです。ターボエンジンなので、オイルを換えてその違いをリアルに体感できるかっていうと、そうではなかったんですが、悪いオイルではないと思いました。だからRスペックを入れてみてもいいのかなとも思いましたけど。

Nagano:鈴木さんと話しをしていたのは、せっかくそういう若者がいるんだったら、いろいろ話を聞いてつくってもいいんじゃないかと。普通はやらないですよ。いつもはショップさんとやっているんで。

 

ロングライフかつオールマイティな

クルマの使用状況にぴったりのオイルって、

意外とないんだよね。 ――Suzuki

 

Morita:では、Tさんに白羽の矢が立ったのはなぜ?

Suzuki:僕らが「こういうオイルがいいでしょう!」と薦めるのもいいけど、一般のユーザーがどういうオイルを求めているのか。僕らもそれを推察しながらやるんだけど、お客さんの意見を直接加味してつくったほうがおもしろいものができるんじゃないかと。ただ、クルマの使い方は人ぞれぞれで、街乗りしかしない人もいれば、高速道路使って長距離をメインで乗る人もいるし、サーキットでガンガン走る人もいる。だけど、これらの要件をほぼ全部満遍なくやってる人って案外いない。そんな中、Tさんはまさにモデルケースなんだよね。

Morita:なるほど。

Suzuki:サーキット走行に特化したオイルはいろいろあるし、街乗り重視のオイルもある。でも、ロングライフかつオールマイティなクルマの使用状況にぴったりのオイルって意外とないんだよね。7割は街乗りや高速使って長距離乗る、2割は峠なんかをちょっと攻める。後の1割はサーキットでガンガン走る。そんな使い方をしても長持ちするオイルがあればいいなぁと。

Morita:でも、それって永野さんにとってめちゃくちゃ難しいお題なのでは?

Nagano:いやいや、本当に難しいのは、シビアなコンディションで乗る人のためのオイルですよ。
シビアなコンディションっていうのは、エンジンかけて7~8km走ってエンジン停めちゃうってパターン。それがいちばんきつい。Tさんの使用状況としては、それほど難しくはないんですよ。

Morita:そうなんですか! 僕はてっきりサーキットでガンガン攻める人が使うオイルのほうがシビアなのかと思っていました。

Nagano:油温の上昇を110℃くらいまでに抑えるような走り方なら、オイルってそれほど傷まないんですよ。僕はアルファ145でサーキット走ってるけど、サーキット走行に特化したオイルって、1回目だとまだぜんぜん傷んでなくて、2、3回走ってちょうど良くなる感じなんですよ。

Morita:へぇ。

Nagano:それよりも冬、子どもを駅まで送って帰ってくるくらいの使い方をされるのが、オイルにとっていちばん厳しい。たとえば、最近の軽自動車のターボ車だと「2,500kmでオイル換えてください」って書いてあるクルマもあるくらい。

T:2,500kmですか!

Nagano:そうなんですよ。でも、皆さんクルマの使い方じゃなくて距離で換えればいいと思ってる。さらにいまどき0W-20とか、硬くても0W-30とかでしょう。しかも安いオイルだと焦げちゃうんですよね。

Morita:なるほど。じゃあ、今回の注文は永野さん的にそれほど難しくはないと。

Nagano:そうですね。オイルの良さを感じようとしてくれる人なら、こっちもやる気が出ます。「オイルの違いを感じさせてみなさいよっ!」って言うくらいの人じゃないとねぇ(笑)。

 

安いオイルを短いスパンで交換するよりも、

最悪1万kmくらい乗っても大丈夫だよ

っていうオイルのほうが、

距離も乗るので、気楽なんですよね。 ――T

 

Nagano:いまのZオイルの粘度が5W-30、その前が10W-60でしょ?

T:そうですね。

Nagano:たとえばマッサージするときに普通のマッサージオイルを塗ったときと、ちょっといいローションを塗ったときって、ローションのほうがサーッと滑るじゃないですか。それといっしょなんですよね。YACCOのいちばんいいやつっていうのは、油膜が仕事をしっかりしてるから、本当は重く感じるところなのに、滑らかさをキープしているから、気持ちがいい。一方、そのZオイルは軟らかいんだけど、軟らかい気がしてるだけなのかもしれない。

T:Zオイルを入れてもらったとき「10W-60じゃ硬すぎるよ」って言われたんですよ。Zオイルは低粘度でも油膜を保持しますというのをウリにしているので、5W-30でも大丈夫だと。たしかに油膜は維持しているんでしょうけど、乗った感じ凄さは感じなかったですね。

Nagano:やっぱりローションのほうが気持ちいいんですよ(笑)。

T:最初の100kmから10,000kmくらいまでは、確かに良く回るなって印象でしたが、それがだんだん距離を重ねていくと、さっき言ったように性能が落ちていく。本来ならその辺で交換するべきなんでしょうけどね。いま7,000kmくらい乗ってみて、まぁ、それなりのオイルなのかなと。でも、安いオイルを短いスパンで交換するよりも、最悪1万kmくらい乗っても大丈夫だよっていうオイルのほうが、距離も乗るので、気楽なんですよね。

Nagano:燃費とかは?

T:10W-60から5W-30に換えても、燃費がよくなったわけじゃないですね。ギャラクシーのほうが良かったくらい。

Nagano:そりゃローションだもん。

T:5W-30にして抵抗は少なくなっているんだろうけど、じゃあ1km、2km燃費があがったかといえばそうでもない。

Nagano:そもそもルーテシアRSの指定粘度でいくつ?

T:10W-40ですね。

 

僕の思ういいオイルって、

ギアがここで噛んでます、

シンクロがここで効いてますっていうのが、

分かるオイル ――Suzuki

 

Morita:鈴木さんの思う「いいオイル」ってどんな条件ですか?

Suzuki:僕の思ういいオイルって、たとえばミッションオイルで表現すると、ギアがここで噛んでます、シンクロがここで効いてますっていうのが分かるオイルのほうが、製品としてレベルが高いんじゃないかと思ってる。ただひたすらスコスコ入るのがいいオイルだとは思ってない。エンジンオイルもただ回ればいいってもんじゃない。

Morita:ちゃんとインフォメーションを伝えてくれるオイルってことですね。

Suzuki:そう。こういう使い方すれば、油温が上がるんだって教えてくれるオイル。吸熱性も放熱性も抜群にいいオイルって一見良さそうだけど、それはめちゃくちゃな運転や操作をしても、オイルが頑張っちゃって情報を伝えてくれないってことだよね。僕は機械ってこういうことをすると負担がかかりますよとか、そういう運転ならエンジンにも負担がかからないよって教えてくれるようなオイルのほうが優れていると思うし、永野さんがつくるオイルもそんな感じになればいいなと思ってる。

Nagano:はい。がんばります。

 

――6月某日。RENOのお店にて。

5月の会談から約1か月後、永野さんが新しいオイルを説明しに来てくれました。そのオイル、どんな仕様なんでしょうか?

 

ああ、こういうエンジンだったんだ、と。

充分な性能を確保している上、

いままでそのエンジンの

知らなかったところを発見できる

オイルになってる ――Suzuki

 

Morita:永野さん、オイルできたんですね。

Nagano:はい。もうRENOさんに納めさせていただきました。

Morita:鈴木さんはもう乗ったんですか?

Suzuki:うん、Tさんのルーテシア2 RSに。

Morita:もう一度、オイルのおさらいですが……。

Suzuki:街乗りがメインでありながら、長距離も乗るし、ときどき峠で攻めたり、サーキットにいってスポーツ走行を楽しむ人を想定。1万kmくらいもつロングライフを前提で。うちにはそういうお客さんが多いんだけど、Tさんはそのモデルケースとして今回いろいろと話を聞かせてもらった感じ。さらにこれは僕の要望なんだけど、とにかく回るオイルとか、そういうのじゃなくて、エンジンのインフォメーションをしっかり伝えてくれるオイルになるといいな、と。ガンガン回るようなレーシングスペックのオイルは、すでにあるんでね。ギャラクシーとか、確かにいいオイルなんだけど、性能がいいから結果的によく回りすぎて疲れちゃうって声もある。

Nagano:で、そういう要望を受けつつ、そのままつくったのではなく、私の提案も加味してみました。スプリントレースなら最低でも3レースは余裕で使えるくらいのベースオイルがあって、その上でいろんな要望を叶えるための足し算をしてつくっていった感じです。

Morita:製品の仕様を教えてもらえますか?

Nagano:SAEで粘度は10W-40。API SN/CF相当でPAOとエステルの混合オイルと思ってもらえればいいです。ちなみにエステルはルブロスの「レーシングフォーミュラー」を使っています。添加剤は、100℃前後の滑らかさと耐久性を上げるため「プロメディック」を入れています。

Morita:鈴木さん、乗った感じはいかがでしたか?

Suzuki:Tさんのルーテシア2 RSに乗ったんだけど、可変カム付のエンジンだとあらためて「こういう動きをするんだ!」というのが分かる。だけど、それは世間的にいいオイルっていうのとは違うかもしれない。人によっては「なんかギクシャクして運転しにくい」と感じる人もいるでしょうね。でも、僕はそれを「素直にエンジンのインフォメーションを伝えてくれる」と取る。これはもう人の認識の違いだね。
たとえばルーテシア2 RSの1,000~1,500rpmのいまいちトルクが薄いところで踏んでやるとスッとトルクが立ち上がってくる。3,000~3,500rpmでまたスッとトルクが盛り上がる。ああ、こういうエンジンだったんだ、と。充分な性能を確保している上、いままでそのエンジンの知らなかったところを発見できるオイルになってる。

Morita:永野さんはこのオイル、サーキットで試しているんですね。

Nagano:まったく同じではないですが、僕がアルファ145に使っているのはプロメディックが入っていないバージョンのもの。高回転のキレがよくなり、シフトアップポイントが若干手前に来る感じ。タイムも同じサーキット、同じ季節で平均0.2秒アップしてますね。

Morita:平均で0.2秒アップはすごいですね。

Suzuki:なんかね”押される感”があるんだよね。

Nagano:押されますね。フーッと。引っ張られるんじゃなくて、押される感じなんですよ。

Suzuki:アルファの145も可変カムだから、そういうエンジンで体感しやすいのかもしれない。後期だよね?

Nagano:後期です。

Suzuki:前期だと、もっと可変カムのダイレクトさがわかると思う。人間古いもんでさ、ツインカムのエンジンはカムに乗っていたいわけですよ。3,000rpm以下は落としたくない(笑)。押されるところを使いたくなる。

Nagano:で、さらに言うと、このオイルをつくって終わりじゃなくて、実車に入れてどうなんだってところがいちばん大事なわけですよ。お客さんから無反応ならまだいいんですけど「なんかダメだな」と言われるようではダメなんで。ここからさらに発展させていくのもアリですね。

 

――7月某日、Tさんから新しいオイルのインプレッションが届きました。

僕は「ライブで聞く音楽」のような

オイルだと感じました。 ――T

使用した車:ルーテシア2 RS2.0(ph2)
使用期間:約1か月
使用距離:1,500km

今回このオイルを使用してみて真っ先に感じたのは「いままでにあまり味わったことがない種類のオイルだな」ということでした。
街乗りや高速道路で乗っているときは、低回転でもきちんと粘ってくれ、エンジン音も(なぜかは不明ですが)少し重厚な音に変化しました。ただし、その重厚感が原因なのかもしれませんが、交換してから1,000kmくらいまでは、これまでに比べてレスポンスが重く(遅く)感じたことも事実で、粘度指数が10W-40と高めであることが影響しているのだろうかと考えました。しかし、それが1,000㎞を越えたあたりから硬さが取れ、スムーズに回り、レスポンスが良くなったことを付け加えておきます。
また、これは初めて感じた感覚なのですが、可変カムの切り替えポイントとはまったく関係のない1,500rpm付近と3,000rpm付近で、それぞれトルクの盛り上がりを感じるようになりました。これは高速走行時にとても効果が出ていて、100㎞/hくらいからの追い越し再加速をする際、いままでなら1段ギアを落としたくなるのですが、トップギアのままスルスルと加速してくれるようになりました。ギアを落として加速をすると、いままで以上の加速をしてくれ、ちょっとスピードが出すぎてしまうきらいがあります。
ワインディングに持ち込むと、高回転域までパワー・トルクともにタレることなくトップエンドまで回ってくれるのに、低中回転域の粘りのおかげで1段高いギアでもそれなりに上って行ってしまうのが驚きでした。
まとめると、今回のオイルはそのクルマ(そのエンジン)の本質を教えてくれるオイルなのではないかと思います。どこまでもよく回るとか、燃費がいいとかではなく、エンジンそのもののキャラクターを明確に見せてくれるオイルだと思います。そういう意味で、僕は「ライブで聞く音楽」のようなオイルだと感じました。これまで使っていたオイルももちろん良いのですが、どこかで「チューニング」をされているように思えてきたのです。今回のオイルに変えてみて、そんな気持ちにさせられました。
このようなエンジンオイルは初めてでしたし、このようなオイルを製作して頂いたLUBROSS/永野様、RENO/鈴木様には改めてお礼を申し上げたい気分です。

 

――さらに7月、同じオイルを入れていただいたメガーヌ2 RSのオーナー・Kさんからもレポートが。Kさんはメガーヌ2 RSに10年乗り、現在2代目のメガーヌRSを乗っています。

常にと言うか

「潤うように回っている」感じがします。

――K

使用した車:メガーヌ2 RS2.0(LSDリミテッド)※チタンマフラー付13台限定

さて白RSのエンジンオイルです。今日けっこうまとめて走れました。市街地、郊外、高速、踏めるとこ、流せるとこまで、私の普段使いの環境をほぼ網羅です。
私ですね、巷にあふれるエンジンオイルの交換直後のインプレ的なものにはけっこう懐疑的な方でして、だって劣化したオイルを新品に換えたら「感じ」が変わるのは当然ですよね。そのことと「銘柄」を変えたことによる「感じ」の違いをきちんと区別して語れてるか。で、自分はどうか。このクルマに関しては語れる自信あります。じゃなきゃ10年何してたんだって話になりますよね(笑)。とにかく、語れてるっていう前提で以下お読みください。
結論から言うと、誰がどう乗ったってわかるようなものすごく劇的なわかりやすい変化が起きたわけじゃないです。が、このクルマに10年乗ってきた自分にはわかる「今までになかったこと」が起きてるのは間違いありません。3つあります。
1つ目は音です。チタンマフラーでしょ。この音、私には「木管楽器」を連想させるんです。意外なほどに角のとれた丸みのある乾いた感じの、言うなれば「音色」です。澄んだバリトン。意味不明なたとえですが。それがですね、なんか野太い感じに変わりました。うーん、木管楽器のソロが伴奏を従えたみたいな。なんか踏んだときの盛り上がり方が違う。「音色」に「うっとり」してたのが「サウンド」に「ゾクゾク」すると言ったらいいのか。
2つ目は回り方です。ターボでしょ。なんつーか、音のない真空に吸い込まれるような加速をしますよね。その吸い込まれ方が尋常じゃないというか。3,000回転あたりからはっきり違います。いや、もっと下からも違うな。回転計の針がやたら上がりたがる感じです。そう、なぜか唐突に、青RSに初めて乗った頃の感じを思い出しました。あー、こうだったわ、みたいな。鈴木さんが書いてた「エンジンの素性丸わかり」的な感じってその通りだと思いますよ。しかもその吸い込まれ方が音のない真空というより、悲鳴を上げてブラックホールに吸い込まれるような感じとでも言ったらいいのか。「うわっ、やべっ」みたいな。4,0000回転から上は回してませんが、一気呵成にいっちゃう予感がしまくりです。今度試します。
3つ目は高速巡航で、そうだなぁ、100km/hで2,250回転 より上で120km/hで2,750回転くらいですかね、一番使うレンジ。で、6速のまま踏んでってもグイッとクルマが前に出る感 じが意外なほど違いました。コレすっごく気持ちいい。その瞬間、自分でも驚いたんですが10年乗ってきて初めて「あ、7速目があってもいいかも」って思えました(驚)。鳥肌モノです。
現時点で語れる違いはこの3つですが、なんだろう、全体的にと言うか、常にと言うか「潤うように回っている」感じがします。もう、一定の投資を惜しまなければ「軽く滑らかに回る」のは当然であって(じゃなきゃおかしい)、たぶんそういうエンジンオイルはいくらでもありますよね。ここ3年ほどお世話してもらってきたユニルオパールもちゃんと軽く滑らかで真面目で正直で働き者な感じですよ。それ自体文句なしなんです。が、ここから先はいつだか鈴木さんが書いてた「趣き」っていうレベルの話になっていくのかなと。私の感じる「潤い」のようなものが鈴木さんの言う「趣き」にあたるのかどうかはわからないのですが、とにかく何か、そういうのを感じます。そうそう、前に何度か使わせてもらった同じルブロスさんのRスペック、でしたっけ、あれはもう、「軽く滑らか」通り越してなんか「狂気じみた」回り方をする感じがあったんです。なんつーか人工的なというか血の通った生身の感じがないというかドーピング的なというか(言い過ぎ 笑)。あの感じとも違います。なんかね、潤ってる。ノンストップで4時間くらい運転してたんですが、久しぶりにもっと乗っていたいって思えました。軽く驚きました。イイですわ。その違いがわかることに歓びを感じる品ですね。もう少し乗ってみます。

――さらにさらに続報です。

MEGANEのエンジンオイルですが、この週末もまとめて走れて計700kmくらいになりました。そうだなぁ、500km越えたくらいからでしょうか。ちょっとだけ印象が変わってきたことがあって、補足しますね。音です。踏んだ時の盛り上がり方がドラマチックなのは、こないだ書いたとおりなんですが、なんでもない時が静かになりました。つまり2,000回転くらいより下でおとなしく回してる時が静かになったというか、元の「音色」に近づいたというか、それでも前よりも厚みのある音色です。うっとりします。で、回すと「サウンド」が盛り上がる感じでゾクゾクです。要するに「二面性」がはっきりした感じに落ち着いたかもです。これすっごく好ましい。
あとはやっぱり潤うように回ってる感じはありありとしますね。てか、潤いが増した感じも。なんつーか、馴染んだ(?)。 そんなことあるのかどうかわかりませんが。それと高速乗ったらまたしても「7速目あってもいいかも」って思えた瞬間がありました。この感覚ホンモノです。

 

お二人とも、新しいオイルを気に入っていただいたみたいですね。文面から伝わるウキウキ、ワクワク感。新しいオイルを楽しんでいるのが分かります。そしておもしろいのが、2.0L NAエンジンと2.0Lターボエンジンの違いがあるのに、お二人とも同じようなことを書いています。音、フィーリング、オイルの性格など、表現は多少違いますが、言わんとしていることは同じことなのかな、と。
かくいう私・森田も1.6L NAエンジンに入れてみました。正直いって、お二人のような繊細な感覚を持っていないので、そこまで多くは語れませんが、印象としてはYACCOのYC-454のようなフィーリングです(そりゃエステル+PAOなので当たり前といえば当たり前ですが)。劇的にエンジンが回るとか、劇的に静かになるとか、劇的に燃費が向上するとか、何か突出するようなことはありません。言うなれば、究極の「普通」。ただ、試したのが一般道と高速道路だけ。あまりエンジンを回していないので、感想を述べるのには時期尚早かもしれません。
もし気になった方がいらっしゃれば、入れてみて、感想お聞かせください。あ、新しいオイルの名前は「Supernova」といいます。

※ルブロスさんはB to Bのお取引きをされているので、個人向けのカスタマイズオイルは販売しておりません。あしからず。

 

TEXT/PHOTO:Morita Eiichi

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