2016年5月22日(日)、福井県金津町にある「金津創作の森」にて「フレンチトースト・ピクニック(FTP)」が開催された。同イベントは今年で14回目を迎え、ゲーム形式のコマ図ラリー(129台がエントリー)は、2年ぶりに越前海岸を走るルートが復活。会場内でもボンネットバス遠足、オールドカー試乗会、フリーマーケットなどが行われた。たっぷり降り注ぐ初夏の日差しのなか、参加は思い思いのスタイルでイベントを楽しんでいたようだ。
Morita(以下、M):今年も晴れましたねぇ。
Suzuki(以下、S):晴れたねぇ。あ、そうそう。遅刻してスミマセン……。9時に来るつもりが、起きたらすでに9時だった。
M:いきなりお詫び(笑)。
S:いやはや、遅刻しといて言うのも何だけど、FTPはあわら温泉に近いし、当日のスタートが意外と遅い。FBM(French Blue Meeting)は8時くらいからだけど、FTPは10時くらいからなんで。
M:朝はのんびりできますね。
S:家族連れで温泉を堪能するもよし、私のように超安宿探してひたすら飲みまくるのもいい。
M:おすすめはしませんが(笑)。
S:ええ、ええ。あわら温泉のひなびた感じもいいですよ。魚、特にへしこうまいし。勝手に前夜祭、ぜひぜひ。
S:中部圏からもフラッと来れる。北陸道は何気に欧州の高速道路っぽいし。せっかく足の長いフランス車に乗ってるなら、長距離ドライブしないとね。でも、マナーは守ってよ。左車線から追い抜きとかダメよ。フランス車乗りはマナーがいいってことにしておかないと、居心地悪くなっちゃうから。
M:ラテン車のイベントって「フレンチブルーミーティング」をはじめ、いろんなのがありますけど、FTPは古いフランス車が多いですよね。
S:そうだねぇ。その中でもシトロエンが多い。DSとか2CVとかけっこう古いクルマから、エグザンティア、XMみたいなちょっと古いクルマもいるね。なぜか古い英国車いるし、国産車もちょっといる。
M:しかも、ちゃんとしてるクルマが多い。
S:見せたい人が見せるに値するクルマを持ってくるわけだから。やっぱりお客さんに見せて恥ずかしくないものを、という意識があるんだろうね。皆さんきれいに乗っていらっしゃる。
S:いつもはクルマ1台1台を取り上げてあーだこーだしゃべってるけど、今回はちょっと視点を変えてイベントを観ようと思ってる。
M:ほう、というと?
S:こういうイベントに来てすることと言ったら、クルマ見て、フリマで買い物して、ご飯食べてってのが普通だと思うんだけど、こういう場を「巨大な中古車展示場」と捉えてみてはどうだろう、という提案。
M:巨大な中古車展示場ですか?
S:そうそう。たとえば初めてフランス車買った人がいたとして。まぁ、フランス車買ったからイベントにでも行こうかと、FTPみたいなのに行きますわね。すると、まぁ、濃いクルマばっかりなわけですよ。30年も40年も前のクルマがピカピカで走ってたり、名前も知らないようなクルマとかを見て「ああ、自分が知っているのは氷山の一角なんだな」って思う。
M:ああ、その感覚、僕も最初にFBMに行ったとき、そう思ったなぁ。
S:で、そういう経験をすると、ときどきさらにマニアックな道へ進んでしまう人も、まれにいる。次はこんなクルマが欲しいなぁって。
M:なるほどー。何となくすずきさんの言いたいことが見えてきた。
オーナーさんに聞けば、掛け値なしの現実を教えてくれる(と思う)
S:つまり、いろんな種類のフランス車が集まるこういうイベントって、中古車をじっくり見るのに最適なイベントでもあるってこと。
M:そういうことですね! これまでそんな視点でイベントを観ていなかったので、目からウロコです。
S:会場のクルマだけでなく、一般の駐車場にいるクルマもできるだけ観たほうがいい。見てくれだけでも、見る目が養われるから。
M:なるほど。いろんな状態のクルマを観た方がいいってことですね。
S:たとえば「次は2CVがいいなぁ」と思ったとする。でも、2CVはもう大古車の部類だから、フランス車の中でも数が少ないし、在庫してるクルマ屋さんを探して、1台ずつ観て回って……って大変だよね。でも、こういうイベントなら、一気に10台とか観れちゃう。
M:DSとかもそうですよね。こんな台数を観て回るのって大変ですもん。
S:エグザンティアとか、もう街中でも観なくなったし、クルマ屋さんも在庫してるところが少ない。
M:クサラとかクサラ・ピカソとか、ビミョウに古いクルマもそうですよね。
M:こ、これは……。DS4なんですね。
S:で、気になるクルマがあったら、オーナーさんに聞いちゃえばいい。
清水の舞台から突き落とされるかも
M:オーナーさんも自分のクルマのことを聞かれるのはうれしいでしょうから、きっといろいろ教えてくれますよね。
S:そうそう。たぶんちゃんと答えてくれると思うよ。で、きれいだな、ちゃんとしてるな、ってクルマはやっぱりそれなりにお金と愛情かけて維持しているし、安くはないってのが分かると思う。
M:それなりのクルマを、それなりの状態で維持しつづけるのって、けっこう大変ですもんね。
S:クルマのことだけじゃなくて、クルマとどのように付き合っているか。カーライフの部分も聞けると、よりリアルだよね。
M:なるほど。
S:でも、話し聞くときは、ちょっと考えて質問してほしい。クーラーないクルマに乗っている人に「夏は暑いですか?」って聞いたら「暑いに決まってるじゃん。何とかなるけど」って言われるかもしれないし。
M:古いクルマ乗ってる人に「壊れますか?」とか。
S:皆さん、そういうのを当たり前のように乗り越えてここにいるわけで。その辺の配慮はあってしかるべき。
M:でも、好きで乗ってる人は「買っちゃえ!」って清水の舞台から突き落とすでしょうね。
S:それか「心配するくらいならやめといたほうがいいよ」とやんわり止めるか。だって、そういう覚悟がないと成し得ない世界だから。それでも飛び降りちゃったら、きっと歓待してくれると思う。
M:買って数年したら、勝手に前夜祭やって、ここにクルマ並べてるかも。
S:そりゃ愉しいね!
M:巨大な中古車展示場かぁ。なるほど。その視点でイベントを観ると、これまでとちょっと違う見方になりますね。
S:そうそう。普通のクルマ屋だったら売りたいばっかりなんで、現実には触れず、美辞麗句ばっかり並べるかもしれない。オーナーさんはきっといいことも悪いことも含め「現実」を教えてくれると思うよ。
M:とはいえ、そんなに現実を恐れてばっかりもねぇ。
S:うん、まぁ5年落ちくらいならさほど苦労しないと思うけど、10年落ち以上はさすがにちょっと構えるべきだし、20年30年落ちになると、もう何が起こっても動じない覚悟が必要だよね。
M:そうですね。
S:目当てのクルマがある人も、目当てのクルマがない人も、パソコンの前に座って液晶画面とにらめっこしてるんじゃなくて、現物を観て、現実を知ってほしいと思う。こういうイベントで自分ができる範囲の、後悔しないクルマに乗るための予習だと思ってさ。
M:それからクルマを選んでも遅くない。
S:そうそう。そんで買って乗って、だんだん病が重くなっていくのもいいし、重病者を憧れのまなざしで観るのもいいし。とりあえず“同病相憐れむ”になっちゃえばいいよ(笑)。
M:なんか今回はいつもと違ってえらくためになる話ですね。
S:いつもはFBMのレポートで“偏った楽しみ方”なんてやってるけど、今回は“正しい楽しみ方”ってことで(笑)。
TEXT & PHOTO MORITA EIICHI