一般公開された3日から9日間開催されていた東京モーターショーが昨日閉幕しました。2009年の開催時よりも期間が短かったにも関わらず、総入場者数は84万2600人と前回の61万4400人を大幅に超えました。増員理由には開催地や開催時間、割引制度などいろいろな仕掛けが功を奏したのでしょうけど、やっぱりトヨタ/スバルの「86/BRZ」の話題性が大きかったかもしれないですね。トヨタの86なんてクルマを一目見るだけで1時間待ち。人気の遊園地のようです。
そういうわけでクルマに関するイベントが盛り上がるというのは、偏ったクルマ好きでも純粋にうれしいもんです。もちろん、ラテン車がどうの、とか運転しておもしろいクルマがどうの、とかそういう視点で見ていれば、モーターショーなんて、いや現代に行われるほとんどのクルマのイベントなんて何ひとつおもしろくないのは事実です。でも、クルマのお祭りですから、このときだけは好みのフィルターを少し緩めて、もう少し広い心でクルマを見るのもいいと思います。僕は今回のショーをそんな気持ちで見ていました。
モーターショーは、言ってみれば現代の最先端をいくハイテクノロジーショーです。だからハイブリッドや電気、燃料電池車などが注目されるのは当たり前。それを「つまらん」と言い切ってしまうのは簡単ですが、よくよく見てみるとなかなかおもしろいもんですよ。ハイブリッドが出たときはまだまだそんな予感はしませんでしたが、電気自動車となると急にクルマが日常生活の中に入り込んできます。つまりクルマが「家電」と同じような扱いになるわけで、それがまた不思議なんですね。クルマを移動の手段だけでなく、電池のように使ったりする発想はいままでなかったわけだし。将来はクルマが家電量販店で買えるようになるどころか、部品を買ってきてハンドメイドしたり、それでレースに出ることもできそう。使い方によっては内燃機関のクルマよりも、もっと身近に楽しめる存在になるかもしれません。クルマの可能性がまたひとつ広がったように思います。
反面、ちょっと違和感もあります。特にトヨタ。他のブースがみなクルマを見せているのに、トヨタはとにかく「ドラえもんだった」という印象しか残りませんでした。結局、ドラえもんの先にトヨタがめざしていることがぜんぜん見えてこない。あれ、海外の自動車メディアにはどう映ったでしょうね。いじわるメディアなら「人気マンガのキャラクターで集客を狙った」なんて言われるかもしれません。
86もそうです。こういうクルマがリリースされることはいいことだとは思うのですがMR-Sから10年間、投資効率が悪いという、いかにもな理由で市場投入を見送ってきたことに腹立たしさを感じますし、若者のクルマ離れが問題視されるやいなや「もうかるもうからないに関係なく、みんなが買えるスポーツカーをつくろう」と都合のいいことを言い出す。「若者のクルマ離れ=スポーツカーを作れば防げる」という安易な発想にもうんざりします。ニーズ、ニーズと言いますが、ニーズを聞きすぎると企業としての信念が揺らいでしまいます。ニーズに応えることも大切ですが、それ以上に「こんなクルマ、どうよ?」というシーズで勝負してほしい(ルノーのようにね)。トヨタは日本を、いや世界を牽引するカーメーカー。だからこそ、ブレない強い芯(ポリシー)を持ち、クルマ文化の醸成に力を注いでほしいと思います。
さて、次回開催は2013年秋。どんなクルマが出てくるのでしょうか。楽しみですね。
TEXT & PHOTO/Morita Eiichi
だからワタシは、”TRUENO”って昔の名前で出てイマスでいいんじゃないかとあれほど・・・