最近の1.2TBってどう? ~RENAULT CLIO GRANDTOUR

メイン3540前回の続き、ということで今回は「最近の1.2TBってどう?」と銘打ち、欧州では主流になっている「小排気量+過給機」を組み合わせたクルマに乗ってみた。しかもちょっと変わりダネのクリオ・ワゴン「グラントゥール」である。1.2リッターにターボを組み合わせたエンジン、そして絶妙のサイズ感を持つワゴンスタイルはどんな印象を与えてくれるのだろうか。

 

前7-33541スマートなカタチ

まず、グラントゥールの生い立ちから。このモデル、そもそもの最初に姿を現したのは2007年3月のジュネーブショー。コンセプトカー「グラントゥール」としてお披露目されたのだが、その頃の写真を見ると「このまま市販してもいいんじゃない?」と思えるほどのデザインだった。その後、同年9月に開催されたフランクフルトショーで正式にデビュー。デザインはやはりコンセプトカーとほとんど変わらなかった。
後7-33542ハッチバックモデルよりも約200mm長い4200mm、全幅は1720mmと同じ、全高も5mm高い1485mmで、ワゴンと呼ぶにはちょっと小さいショートワゴン、という風情だろうか。おそらくライバルであるプジョー207 SWに対抗して、のことだろうが、デザインに関して言えばリアビューのインパクトが強い207 SWに対し、グラントゥールは至ってシンプルでスマートだ。その自然なデザインは街ですれ違って「ああ、ルーテシアね……。ん? クリオ? しかもワゴン!?」と二度見してしまいそう(街ですれ違うことは皆無だろうけど)。まぁ、そもそもハインパネ3530ッチバックベースのワゴンとなると、そのスタイルはだいたい3つに分かれると思う。1つは207 SWのようにインパクトを狙ってそれなりに成功したタイプ、2つ目はこのグラントゥールのように自然にすっきりまとめたタイプ(思い返せばファミリアのSワゴンも自然だった)、3つ目はインプレッサやアルテッツァ、マーチのようにいかにも取って付けたようなカタチになっちゃったタイプ。個人的には1つ目のインパクトを狙って個性を演出するタイプ以上に2つ目の「いかに自然に見せるか」が最も難しいのではないか、と思う。というのも、ホイールベースを延長せずに荷室だけを拡大しようとすると、いかにも「後から付けました」的なカタチになってしまうものだ。そこをルーフからリアウィンドウに続くラインやCピラーやDピラーの角度に変化を持たせ、一体感のあるデザインにまとめるのは至難の技だと思う。その点、グラントゥールはどの角度から見ても違和感がないし、はじめからこういうクルマだったのね、と言われればそう見えなくもない実に秀逸なデザインではないか。

前席35311.6並みのパワーとトルク、1.2並みの燃費。

グラントゥールを借り出し、さっそく撮影場所に向けて高速道路で移動することにした。当該車は9,000kmほど走っているからだろうか。シートは適度にこなれ、ルノー車独特のしっとり感がある。そして乗り心地は前回のクリオ1.2よりもさらにワンランク上の快適さを感じた。クリオ1.2でも充分乗り心地がいいのだが、グラントゥールはもっと高級感がある、と言えばいいのだろうか。分かりにくい例えかもしれないが、クリオ1.2がごく普後席3532通のじゅうたんの上を歩くときの感触なら、グラントゥールは高級なホテルとかに敷いてある毛足が長く、厚みのあるじゅうたんの上を歩くときの感触。2世代ほど前のクルマに乗っている私にしては、グラントゥールはもはや高級車の域だ。こんな基準でラグナとか乗ったらどうなっちゃうのか……。
高速道路に乗るとその高級感をさらにビンビン感じることになる。その最たる要素は静粛性だろう。クリオ1.2のときもエンジン音やハーシュネスが抑えられているなぁ、と感心したが、グラントゥールはもっとラゲッジ(通常)3533静か。これに慣れてしまうと、いつの間にか法定速度を軽く超えてしまいそうになるから気をつけないといけない(ちなみに5速100km/hで回転数は2,750prm)。
さて、注目のエンジンだが、グラントゥールに搭載されるのはトゥインゴGTと同じ形式の1.2リッター+ターボで、前述したとおり欧州では燃費向上と高出力が得られるユニットとして主流になっている。燃料噴射技術の精度が上がったことでターボエンジンの大出力はそのままに、高い圧縮比にラゲッジ(倒し)3534よって燃焼効率も上げることが可能になった、いわば“おいしいとこ取り”なエンジン。ただターボの役割はパワーを稼ぐためでなく、あくまでも1.2リッターのトルク不足を補うためのもの。’80~’90年代のボルボやサーブのエンジンに搭載されていたロープレッシャーターボと基本的には同じ考え方だ。
事実、クリオ1.2は踏めば走るが、3,000rpmまでのトルクが薄かった。それに対し、グラントゥールは低回転域のトルク不足を見事に補い、クラッチミートから3,000rpmまでの領域にイライラしなくて済む。アクセルレスポンスも格段に向上しているからキビキビ感も◎。反面、このような特性のエンジンだから、高回転域まで回してもドラマが起こるわけではない。トルクに乗せてポンポンと早めにシフトアップをしていくのがグラントゥールの個性を引き出す乗り方だと思う。

ラゲッジ(二重底)3535賢い人の賢い選択。

撮影場所に移動してからラゲッジルームを中心にまじまじと観察。さすがに荷室はハッチバックと比べ物にならないくらい広い。リアシートを立てたままの状態でも、439リットルの容量(ハッチバックは288リットル)を確保しているし、荷室の床は二重底になっているから使い勝手も良さそうだ。
じゃあ、このグラントゥール、どんな人に勧められるのか。やっぱり子どもが1、2人いる家エンジン3538族がメインターゲットか。旦那さんはもちろんクルマ好き。走るのが好きで「MT以外のクルマなんてクルマじゃない!」と心の中では思っていて、本当ならスポーツカーが欲しいなぁ、と考えている。けど経済的な理由や駐車場の関係でクルマは2台所有できないから、必然的に1台でオールマイティに使えるクルマが候補になってくる。奥さんはMT車の運転ができるのが救いだが、買い物にも使うから取り回しの大変な大きなクルマはNG。そもそもこのご時世、大きなクルマは維持費もかかるからダメ。燃費がよくて小さくて、子どもを安心してタイヤ3537乗せられるクルマがいいと主張する。じゃあ、5ドアのコンパクトハッチにすればいいと考えるが、旅行やキャンプにも使いたいので荷物は家族分+α載せられるものがいい。奥さんは「1つ前のカングーがかわいい」と言う。しかし旦那さんはあのトールボーイスタイルがちょっと……と眉をひそめる。「アルファロメオの156か159のスポーツワゴンは?」と聞けば「大きいし、高いわ」と答えられ、それ以前にスポーツワゴンと謳っておきながら、MTがないことを知りがっかり。「いや、待て。この条件で比較的新しいクルマって、そもそもあるのか?」。 バックソナー3539旦那さん、さっそく某大手中古車サイトで調べたところ、アテンザ・スポーツワゴン、レガシーツーリング・ワゴン……、どちらもちょっと大きい。となると、カローラ・フィールダー、プロボックス? いやいや、いくらなんでもそれは。あ、インプレッサ・スポーツワゴンには1.5でMTがあるのね。でもスタイルがなぁ……。となると、206 SW XS、207 SW GTi、C3 Picasso……この辺りになってくるのか。
と、長くなってしまったが、こんな感じで逡巡されている方エンブレム3543にぜひグラントゥールも候補に入れてほしい。そして、これらの競合よりもメリットのあるアピールポイントを挙げるとするなら、まず1.2+ターボの組み合わせによる低燃費性と走りの力強さ(ちなみに前オーナーの話だと、高速道路で5名乗車+荷物でリッター20km走ったという。慣らし最中だったのを差し引いても自慢できる燃費だ)。スポーティー仕様のディナミクをベースに、パックGTというオプションを装備。バックソナー、リア濃色ガラス、アルミホイール、電動格納ドアミラー、コーナーリングランプなどなど、贅沢なアイテムが盛りだくさん。トータルに考えれば、非常にお得ですよ、旦那さん。あ、でも、ひとつだけ。ご購入の際は、奥さまに左ハンドルであることをご了承くださいね。

TEXT & PHOTO/Morita Eiichi

 

2008y RENAULT CLIO GRANDTOUR DYNAMIQUE PACK GT 1.2 TCE
全長×全幅×全高/4200mm×1720mm×1490mm
ホイールベース/2575mm
車両重量/1190kg
最大出力/74kW(101PS)/5500rpm
最大トルク/142Nm(14.5kgm)/3000rpm

関連URL http://www.reno-auto.net/wp/archives/3594#more-3594

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