M:はい。局地的、ゲリラ豪雨的に売れている「ダシア・ドッケール」についてです。クルマ自体の紹介はこちらを見ていただくとして……。今回はどのグレードがベストバイのかって話ですね。どのグレードっていうよりも実際は「アンビアンスVSステップウェイ」なんですけど。
アンビアンス=215万円(8%税込)、ステップウェイ=245万円(8%税込)
S:ドッケールには4つのグレードがあるんだけど、僕は下から2番目の「アンビアンス推し」なのね。なぜなら、黒バンパーに最低限の装備、そして215万円(8%税込)という価格が絶妙だから。最上級のグレードには「ステップウェイ」というのがあるんだけど、これになると245万円(8%税込)。アンビアンスよりも装備は充実してるけど、この価格になるとカングーの「ゼン(249万円)」も視野に入ってくる。
M:アンビアンスの良さも分かるけど、僕はステップウェイもいいなぁと思うんですよ。装備が充実してて、色も選べて、それで245万円ならカングー・ゼンよりまだ安い。ちょっとだけだけど。
S:まぁ、この30万円の差をどうとらえるかだね。あと値段と年次モデルのことだけど、アンビアンスは消費税が10%に上がれば220万円。2018年モデルはトリップコンピューター、チルトステアリング、電動ドアミラー、シートリフターがついてない。それらが装備された2019年モデルは、数万円値上がりしてる。なので、こちらもなるべく若干の値上げに留めるよう努力はするつもりでいたけど、結局2020年モデルはいまのところ存在しない(後述)ので、事実上、2019年モデルで終了ということになっちゃうね。
M:なるほど。そういうことですね。ちなみに、ドッケールのグレードって他にもありますよね?
S:あるよ。じゃあ、ちょっとグレードを整理しようか。
ドッケールは4グレードで展開
S:いちばん下のグレードは「ドッケール」。
M:そのまんまですね。
S:パワステなし、手巻きのウィンドウ、手動ドアミラー、エアコンなし。エアコンはオプション設定すらない。とにかく何にもなし! ってのがドッケール。
M:すげーなー(笑)。
S:なので、これを輸入する予定はないです。車両代全額を受注時先払いしていただければやりますけど、そんな人いないでしょうね。いても、夏の改善予備検査登録納車は勘弁してほしい……。で「アンビアンス」は「これくらいはいるよね」ってのが付いてる。ただ、日本で乗るにあたって付いていてほしいけど、付いてないのが、左スライドドア。
M:ああ、標準は右のみなんですね。
S:うん。あと、エアコンがない。なので、左スライドドアとエアコンをオプションで付けたものが、うちでやってるやつ。左スライドドアなくていいって方は別途承ります。が、先にお金ください……。前述のドッケールと同じく、他に誰も買わなさそうなものだから。あとはオプションでルーフレール付けたり、ボディ同色バンパーでフォグランプを付けたりもできる。
M:ふむふむ。
S:で、その上にあるのが「ローレート」。これは装備的に日本に輸入されているカングーのような感じ。ひと通り欲しいものが付いてますよね。アルミホイールが標準装備だし。その他ちょっと豪華装備もあって、一般的な仕様ですねっていうグレード。
M:なるほど。
S:じゃあ「ステップウェイ」は何かっていうと、RV的な。
M:いまっぽく言うとSUV的な。
S:そう。
M:だとすると、装備や機能的にはローレートとそんなに変わらない?
S:おおざっぱにいうとそうだね。外観、内装のデザインが違ってる感じ。ステップウェイはローレートの装備にいくつか追加される形になるから……。
M:じゃあ、まずローレートの装備を説明しましょう。
S:そうだね。えーと(カタログを見ながら)
- ひじかけ
- マニュアルエアコン
- ルーフレール
- ボディ同色バンパー
- 15インチアルミホイール
- オートパワーウィンドウ
- トリップコンピューター
- 左右スライドドア
- フォグランプ
- クルーズコントロール
- 専用内装
謎の「フレキシホイール」
M:なるほど。で、ステップウェイはこれにプラスして……
S:そうそう。それが
- 専用内装
- 大画面カーオーディオ(欧州ナビ含む)
- パックオールロード(バンパーにシルバーの加飾が入ったやつ)
- シルバードアミラー
- レザーステアリング
- 16インチフレキシホイール
S:大画面カーオーディオ、日本語化はできるがラジオバンドは欧州のまま。欧州ナビはあるけど、地図がないから動作しない。かつ、オフにできる。このあたりは現行ルーテシア4と概ね同一のシステムじゃないかな。
M:最後のフレキシホイールって何ですか?
S:これがねぇ。謎なんですよ。まぁ、後で紹介するんで。
M:へー。楽しみ。
S:こうやってみると、ローレートよりも豪華装備っぽいんだけど、そうでもないのがフレキシホイールなんだけどね。
M:それ、驚きなんですか?
S:驚きだね。すげーびっくりした。なんだこれ、16インチのアルミがこういう名前なんだろうねっと、お客さんも僕もアルミだと思っていた……という感じ。
M:ますます気になる……。
S:で、いま店頭にあるクルマはステップウェイの専用色。他のグレードにこの色はない。
M:これ、けっこうきれいな色ですよね。
S:明るめの青メタ。おおざっぱに違いはそういうところなんだけど、さっきのフレキシホイール、見てみようかね。
M:なんと! 新しい!
S:フレキシホイール、ローレートがアルミだからステップウェイもアルミだと思うじゃん、普通は。でも、確かにカタログなどの資料にはアルミのアの字もなく、フレキシホイール。ぱっと見、アルミに見えるけど鉄ホイールにホイールキャップという……。正直、やられた感ありましたねぇ、コレ見たときは……。
215万円とは思えないデザインと品質
S:アンビアンスのことを「まったくもって目を引かない」って言うけど、貧相ではないと思うんだよね。安っぽくは見えない。というか、カングー1とほぼ同等の装備なんじゃないかと思う。
M:そうですね。
S:これでいいじゃんと思うんだよ、おじさんは。だってカングー1で満足できてる僕にとって、これで充分だもん。チルトステアリングとシートリフターがあるだけですっげぇ進化した気分が味わえる!(レベル低っ!) 215万円とは思えないデザインと品質だと思うし。
M:だからRENOさんのお客さんはそこに価値を見出して、購入されているんでしょう。
S:ただ、何だかんだ言って5台売った中で、2台がステップウェイなんだよね。
M:あれ、そうなんですか?
S:あるお客さんは、ボディカラーの関係でステップウェイにしかその色がないっていうのが理由だったんだけどね。
M:ああ、なるほど。色は好みがありますからねぇ。絶対この色がいいっていう人もいますし。
S:そもそもアンビアンスには、選べるほど色ないからね(笑)。
M:色替えで30万かかるとしたら、はじめからステップウェイを選ぶかも。
1.6のドッケールがなくなる!?
S:話変わるけど、ドイツにね。白の黒バンパー、フォグ付き、ルーフレール付きっていう、アンビアンスにいろいろ付いた仕様のが、とあるクルマ屋に2台あって。
M:ほしいなぁって?
S:買うのか……。
M:でも、すずきさんにとっては理想の仕様じゃないですか?
S:そうだね。フォグ付いて、まぁ、ルーフレールはどっちでもいいですけど。
M:使う人によってはルーフレール必須ですもんね。フォグ有りもいいなぁ。
S:そういえば、1.6 SCe 100が終了するんで、のんびりしてると買えなくなっちゃいます。
M:ということは、次はターボ?
S:1.6 SCe 100がユーロ6Cに対応できていないんですよ(ユーロ6Cは2017年9月から実施された排出ガス規制)。なので、いったん販売を中断するということ。あくまでも推測だけどね。その代りに1.2ターボになるんだけど、それはいまより20万円高い。その値上げ分の一部は、排気フィルターなどユーロ6Cへの対応費用も含まれてると思う。あくまでも仮説だけど、将来的に1.6SCe100が再登場したとしても、排気フィルターの追加とかで、たぶん値上がりは必至、パワーダウンもやむなしだろうね。ターボみたいに小細工は無理だろうし。
M:なるほどぉ。それにしても20万円ですか。
S:アンビアンスが215万円で、ここからさらに20万円上乗せされたら、他に買えるクルマがあるよねってことになる。
M:そうですね。そうなるとアンビアンスの価値が下がりますよね。
S:10月に消費税が上がったら、215万円のアンビアンスが220万円+排気フィルターなどの値上げ分。1.2ターボなら240万円。だから1.2のドッケールをやるよりも、そのドイツにあるヤツを取った方が若干費用は上乗せになるけど、そっちのほうがいいんじゃないかと。
M:そうですね。
S:だって1.2ターボのドッケールなんて、カングーと差がなくなっちゃうもん。カングーだって1.2ターボだし、値段でも差が付けられない。さらに10月以降、消費税アップで1.2ターボは240万円(10%税込)になるので、たぶんうちはやらない。
M:そうなっちゃいますね。
S:なので、この7月現在、10月あたりに最後の1.6 SCe 100が現地のディーラーに来る。それが注文してあるクルマとして最後の新車。日本に来てその後、登録・納車は12月以降になるかなぁ。それまでの間に、ドイツかその他の国で完成車である新車もしくは新古車を何台確保できるか。ちなみに流通の妙で、ドイツ以外の国は、ほとんど在庫車を持っていないんだよね。
M:ほう。それはなぜ?
S:どうやらドイツは日本のディーラーと同じような仕組みらしく、インポーターからディーラーにクルマが押し付けられていく。ディーラーはそれを在庫して売る。ほかのヨーロッパの国はお客さんから注文をもらってそれを収める。ディーラーには基本的に展示車と試乗車しかないっていうスタイル。なので、フランス、ベルギー、オランダなどにはない。
M:へぇ、ドイツってそういうシステムなんですね。
S:確保できた赤色のステップウェイが来るけど……。しかも2020年ドッケール、高価いじゃん! 2019年の安価いのですぐ乗れるのって、ないの? ってのは欧州でも同じコトを考える人は少なくないと思うし。即納車の在庫車はみるみる減ってきそうな気がする。イヤ、実際減ってる。コンタクト取ろうとしてるうちに売れちゃって、他が既に数台。そんななかで、何台買えるかがポイントとなるんだけども、そんな潤沢な予算私には、ない、皆無だ……。
M:うーん、なかなか悩ましいですね。
ドッケールのエンジンは「ファイア」に似てる
S:たぶん1.6 SCe 100が日産エンジンだから余計にウケがいいんだと思う。これ以前はルノーエンジンだったんだけど、1.6のシングルカムだったから。こんなに動力性能高くなかった、と思われる。でも、いまとなっては2018年、2019年にしか存在しないモデルになってしまった。
M:1.6 SCe 100はそんなにレア?
S:だって、僕最初、これ取ったときはルノーのシングルカムエンジンが載ってると思ってたもん。ちょっとアンダーパワーだけど、シングルカムならランニングコストも安くていいかと思ってボンネット開けたら「眺めが違う!」と。
M:1.6 SCe 100は軽快でいいですよね。軽やかに回って。
S:ツインカムで、ガンガン回るってタイプではないけど、僕ね「ちょっとドンくさいフィアットのファイアエンジン」って感じがする。
M:ああ! わかる!
S:印象的にはイヤじゃないけどね。ファイアだと1.2とかなんでアレだけど。
M:でも回り方が似てる。
S:ファイアが1.6エンジンだったらこんな感じかなって思うよね。
M:ファイアが1.6でもトルク感のない回り方をすると思う(笑)。
S:でも、これは排気量分、そこそこのトルク感はあるけどね。エンジンとしてはフレキシブルでいい。色気はないけど。
M:まぁね。そこまでは。
S:でもね、余談だけど「Lubross Supernova」を入れると、結構なんか色気を演出してくれるのですよ。僕は好きだなぁ、アレ。
流用の美学
S:ダシアにも当然、デザイナーがいると思うけど、意識的なのかどうかは分からないけど、10年前のデザインだよね。いまの最新じゃない。
M:ああ、たしかに。
S:最新のデザインって、デザイナーの人に怒られるかもしれないけど、みんな手詰まりで余計なことをすることで主張してるじゃん。陸運事務所で目の前に某高級車がいたんだけど、テールランプがすごい複雑な造形してるんだよね。こうやって作るんだー。ドッケールなんてネジ2本でパカッと外れるだけなんだけどなぁ。縦長のシンプルな形だし。僕はこれでいいよって。
M:そういうことしないと、デザイナーが仕事した感がなくなってきているんでしょうかね。
S:いやぁ、単に手詰まりなんだと思う。やるとしたら、クルマの禁じ手、ライト類を奇数にするとかさ。そういうこと以外にないんじゃないか。ブレーキランプはいま奇数だけど、ヘッドライト3つにするとかね。
M:それくらいフォーマットを崩さないと。
S:やらんでもいいところを崩さないとダメな気がする。だからこそ、こういうのがいいんじゃないか。
M:逆に新鮮ですよね。
S:まぁ、ダシアだから許されるってこともあるとは思うけどね。
M:でも、ダシアはルノーのパーツをたくさん使っているから、制約が多いという難しさもあると思いますよ。
S:でも、スイッチ類だけじゃない? 共用してるのって。これ、ガバッと開けるとトゥインゴ2とほとんど一緒って感じかも。ドアミラーのコントローラーも歴代ルノー車のものだし、ドアオープナーやシフトノブはトゥインゴ2だし。
M:内装デザイナーは部品の共用をしながら、まずあるべきところにちゃんと収めるのを大前提にしている。その上で各車のデザインするわけだから、やっぱり制約はありますよ。
S:でも、それでこのクオリティなら充分じゃない?
M:ダッシュボードのシボとか上と下で変えてるし。ちゃんと押さえてる。一緒だったらのっぺりしちゃう。
S:そうだね。そうなると安っぽく見えちゃう。
M:メーターフードの上もわざわざ2段にしてるし。
S:ここ、別に2段にする必要性はないもんね。僕はもう何台もドッケール触ってきたから免疫付いちゃってるけど、そうじゃない人がこのクルマに乗せたらどういう反応があるだろう。「これで215万円? 意外に安いじゃん」とか「いや、もっとすると思った」とかならダシアの勝ちだよね。
M:そうですね。
「アンビアンスVSステップウェイ」。結局どっち?
M:はい。後半はもう「アンビアンスVSステップウェイ」という話題から逸脱しまくってますが、僕はちょっと見方が変わりました。最初はステップウェイがいいと思ってたけど、実際にアンビアンスをじっくり見ていくと、日本で不自由なく使える装備が揃ってるし、特別安っぽい感じもしない。それで215万円なら悪くないのか、と。ただ、決定的な違いは外観、内装、色。この3点。白とか黒とか紺がいい人はアンビアンスでいいのかも。あと商用車チックな無塗装樹脂バンパー萌えの人。
S:まぁ、そうだね。最初にも言ったけど、アンビアンスとステップウェイの価格差30万円を安いととらえるか、高いととらえるか。僕はステップウェイにするなら、カングーでいいじゃんと思ってしまう人なので、やっぱりアンビアンス。地味で素っ気ないから、ぜんぜん目立たないけど、目立ちたいと思って乗ってるわけじゃないからね。
M:たしかに。
S:そもそもさ、ダシアに訴求効果なんかないじゃん。皆無なんだから、だったらなにも奢る必要もない。ダシアってそもそも誰も知らないし、知らないからって知らないものをわざわざ書く必要もない。自己満足にすらなり得ないよ。だいたい他にいないよね。他のダシアと接近遭遇するなんて、弊店界隈でないとあり得ない。それが現実。ヘンに飾ったって、イイの買えなかったんだねを自己肯定するに過ぎなくなっちゃう。
M:おお、正論。
S:他のネームバリューのあるカーメーカーや車名だったら、そのなかの上級仕様とかハイパワー仕様とか、鳴り物入りでないと、ダメー言われそうだけども、ダシアだもん。素ったかでイイじゃん。そこ頑張っても誰も知らん(笑)。
M:そりゃそうですよね。
S:だから、アンビアンスでイイと思うなぁ。傲らずシレーと乗る。まぁお好みならスッテカー貼るとかでゴテゴテしくしても、それはオーナーさんの好みなので、とめないけど。でも、王道は素ったかをシレーと乗る。せいぜい「POWERED BY NISSAN」のステッカーあったら貼ってみたいとか。いや、コレは貼ってみたい。事実だし。あ、ルーマニア国旗は、誤解招くので調べてからにした方がいいと思うし。
M:「POWERED BY NISSAN」のステッカー、いいかも。
S:まぁ、とにかく気づかれたら「ダシアドッケールですが、なにか?」でイイと思う。気づなかったら、それでいい。だって所詮自己満足の世界だもの。それが成り立つ、そういうのは今となったら、意外と希有なバッジな気もしないではないダシア。私は好きだなぁこういう肩の力入ってませんよ的なの。