300ps、400ps、500ps……。世の中のクルマには「そんなにパワーあってどうすんの?」と言いたくなるようなモデルがある。パワーウォーズは特に海外で白熱しているが「そんなパワーはあってもムダ。だってそんなのどこで使うのさ」と言う人もいるだろう。たしかに正論かもしれない。しかし、有り余るパワーを持つクルマは減るどころか、次々と出てくる。果たしてそれは、本当にムダなのだろうか。
RSのこだわり。
これまでルノーのハイパフォーマンス版「ルノー・スポール(以下RS)」は、ルーテシアやトゥインゴで紹介してきたが、メガーヌは今回が初めて。とはいっても、現行のメガーヌではなく、もういまとなっては古いクルマの部類に入りつつあるメガーヌ2のRSである。
メガーヌ2は2002年に「退屈へのレジスタンス」という刺激的なキャッチコピーを引っ提げてデビューした。特にリアセクションは、アヴァンタイムやヴェルサティスのデザインエッセンスを取り込み、個性的な形状をしている。いまあらためて見ても古さを感じないし、よくこんなデザインを破綻なくまとめたなぁと感心してしまう。
ボディタイプが多いのもメガーヌの特長だ。3ドア、5ドア、4ドアセダン、5ドアのワゴン、オープン、ミニバンのセニックも加えるなら全部で6種類。エンジンも直列4気筒の1.4、1.6、2.0のNAと2.0ターボ、ディーゼルの1.5、1.9のNAと2.0ターボがラインナップされる。
日本へは2003年から導入され、4ドアセダン以外のすべてのボディタイプが入ってきた。エンジンは1.6、2.0とRSの2.0ターボ。RSは1年遅れた2004年からで、最大の特長はやはりエンジンだろう。最大出力165kW(224PS)/5500rpm、最大トルク/300Nm(30.6kgm)/3000rpmはツインスクロールターボエンジンによって発揮。カムシャフトやピストンも通常のNAの2Lユニットから変更されており、91ps/11.1kgmの増強を果たしている。それに組み合わされるトランスミッションは、日産が開発した6MTで1速と2速にダブルコーンシンクロを備えている。
足回りの強化もRSのこだわりが詰め込まれている。マクファーソンストラット/トーションビームの形式はストックモデルと共通だが、フロント部分にクロスメンバーを追加。ダンパーはフロント15%、リア12%にそれぞれ固め、リアのブッシュは12%強化したものを使用している。ちなみにリアのトーションビームも12%の剛性アップが図られている。
フロントサスペンションのジオメトリーを見直し、ハブキャリアやストラットからの入力影響を受けにくくするため、ステアリング軸を独立して設置。キングピンのオフセットをストックモデルの60mmから32mmに減少させることで、トルクステアを抑える工夫がなされている。もっと詳しく知りたい方はこちらのサイトを読んでいただきたい。「RENAULT Lutecia Related(http://www.geocities.jp/bequemereise/lutecia.html)」
さらに、フロントのブレーキディスクは312mm径のベンチレーテッドで、4ポッドキャリパー(フロント)とともにブレンボ社製が奢られている。リアは300mm径のソリッド。キャリパーとともにAte社かLucas社製ではないかと思われる。
実際に乗ってみる。ここまで手が入っていると以前乗ったNA 2.0Lモデルとはまったく違うのが分かる。特に足回りは別物の印象。NA 2.0Lモデルはしなやかでまろやかな感触だったが、RSはストロークが少なく、ダンピングがかなり効いている。その印象が如実に感じられるのはコーナーリングで、ほとんどロールせずフラットな姿勢を保ったまま、スッと鼻先が入り、何事もなかったかのように曲がっていく。コーナーの途中に小さなギャップがあったとしても、まったく意に介さず、コトッという振動がわずかに手に伝わるだけで姿勢はぜんぜん崩れない。ただ電動パワーステアリングの感触は、個人的にあまり好みではない。これでもストックモデルから改良されたようだが、路面からのインフォメーションが薄く、切り始めの感触がデジタルチックな感じがする。ただ、これは油圧のパワステを良しとしている私の基準なので「電動パワステで何が悪いの?」という向きにはまったく関係ない話なので忘れてほしい。
エンジンはさすがにパワフルでトルクフル。(そうそう。ここでちょっと宣言しておきたいことがある。私、ターボの感覚基準をあらためようと思う。近年はご存じのとおり、ターボはパワーを稼ぐものではなく、燃費を稼ぐものになり、ターボが効いているかどうかは体感的に分かりにくくなっている。車名に「ターボ」と堂々と謳うモデルも少なく、ブースト計すら付いていないモデルもある。つまり私のような前時代的な人間にとって、いまのターボは全部「マイルド」である。だから、そろそろ昔のターボを基準にするのは止めようと思う)。NA2.0Lモデルに乗ったときは「これで充分」と思っていたが、RSに乗ってみると、NAが物足りなく感じてしまうほど。パワーとトルクも雲泥の差だ。
最近のマイルドなターボの効き方を基準にすると、RSはターボの効果が分かりやすいような気がする。実際そんなことはないのだが、アクセルをパーシャルに保っていても、勝手に加速していくような速さがある。何者かが車輪を回すのを手伝っているのが分かる、そんな加速感だ。ただ、エンジンの回転フィーリングはとても滑らかで、攻撃的な要素はない。あまりにもマイルドかつスムーズに高まっていくので、スピードメーターを見ていないと「いつの間にこんなスピードに!」と驚くことになる。速いのに、その速さを感じさせない。良くも悪くも、これがメガーヌの個性なのだろう。今回は高速道路での試乗は叶わなかったが、NA2.0LでもあのGTっぷりである。RSならさらにその上を行く快適さと気持ち良さを味わえるに違いない。長旅であるほど、メガーヌを相棒に選びたくなる。
もうひとつ、すばらしいと感じたのがブレーキの効きとタッチ。この時代のルノー車(ルーテシア2 RSやカングー1など)は、若干オーバーサーボ気味のセッティングが多く、このメガーヌRSも大きな括りで言えばその部類だ。しかしこれくらいパワーのあるクルマはオーバーサーボ気味がちょうどいいと感じたし、何より高い速度域にあっても驚くほどのスムーズさでスピードを殺していく効きは快感すら覚える。そしてタッチも非常に有機的だ。自分の足がブレーキペダル、フルード、倍力装置を経てキャリパーピストン、パッド、ディスクローター、そしてタイヤがしっかりと地面を掴んで直進する力に抗っていく行程を鮮やかにイメージできる。そこには何の不安感もない。アクセルを踏む以上にブレーキを踏むことに楽しさを感じるクルマは、これまであまり経験がない。
さてもう1台のメガーヌRSは世界限定500台の「トロフィー」である。その名前を聞くと思わず3.5L V6をミッドシップするあのクルマを想起してしまうが、あっちは純粋なレーシングカーなので、このモデルとはもちろん違う。メガーヌRSトロフィーは2005年に登場した限定車で、メガーヌRSにチューニングを施したモデル。その後のトロフィーシリーズのハシリとなったモデルでもある。
では、どこがどう違うのか。まず足回りから。フロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームで形式はストックのRSと変わらないが、フロントのスプリングレートを25%アップ、リアが77%もアップされ、それにともないダンパーの減衰特性も調整している。ブレーキはブレンボ社製のディスク&キャリパーだが、ディスクにはドリルドローターが与えられている。ホイールは専用品でストックのRSに装着されているものよりも、1.5kg軽量なダンロップ製「ディレッツァRZF」を履き、タイヤは「ダンロップSPスポーツマックス」が組み合わされる。外観的な特徴は、このタイヤ&ホイールくらいで「トロフィー」を主張するバッヂなどは付いていない。
インテリアに目を移すと、ストックのRSがフルレザーシートだったのに対し、トロフィーはファブリックとレザーとのコンビネーションシートに変更されている。そしてひときわ存在感を放つのは、センターコンソールのフェイスパネルと運転席&助手席のドアグリップ部に装着されたカーボンパーツである。このパーツの価格は驚くほど高価らしいが、迫力と凄みを感じる上にまるで女性の脚(脛)に触れているようなセクシーな感触が心地よい。
乗ってみて最初に違いに気付いたのは、足回りではなく電動パワーステアリングのフィーリングだった。ストックのRSからマッピングが全面的に書き換えられているとは聞いていたが、かなりフィーリングが良くなっている。路面からのインフォメーションが自然に伝わってくるし、デジタルのようなオン/オフの切り替えがはっきりしている感じが薄まった。アシストの入力曲線がなだらかになったような感じといえばいいのだろうか。とても好印象だった。このマッピングを得て、ルノーはその後のクルマ(メガーヌRS以外)にもこのセッティングを展開しているという。
足回りはスプリングレートを強めたと聞いてちょっと身構えたが、乗り心地はまったく犠牲になっていない。リアシートに座っていないので分からないが、多少の突き上げ感はあるかもしれないが、全体的にはよりロールが抑えられ、RSよりもさらにフラットになったように思う。ただ極低速域では、ルーテシア2 RSにあったようなヒョコヒョコした微振動を感じた。おそらくスプリングもダンパーも固められているので、路面の微妙なアンジュレーションも拾って伝えてしまうのだろう。しかし、これに関しては弱点というほどのものではなく、すぐに慣れる。言われなければ気付かない程度のものだ。
エンジンはストックのRSと変わらないので上述に準じる。しかし、ちょっとしたワインディングに持ち込むと、トロフィーはそもそも持っているエンジンのポテンシャルをさらに引き出してくれるような走りを見せてくれる。固められた脚は、ワインディング(もちろんサーキットでも、だろう)でこそ、その真価を発揮する。ストックのRSと比べていちばん違うと思ったのは、安心感だ。ストックのRSでも安心感は充分に高いのだが、ちょっとオーバースピードでコーナーに突っ込んでしまっても、何事もなかったかのように曲がっていってしまう。そのあまりにも深い懐に、2速メインの峠道ではこのクルマの良さを引き出せないな、と思うくらい。100km/h以下の速度域は、トロフィーの氷山の一角。ヒリヒリするような感覚を味わいたいなら、やはりサーキットに持ち込んでアクセルペダルを床まで踏みつけるしかない。
メガーヌRS、そしてメガーヌRSトロフィーに乗って感じたのは、両車ともハイスペック・ハイパフォーマンスなので、自分のような素人がこれらのクルマの性能を使い切ることは難しいということだ。ただ、その有り余る“才能”を使い切れないことがムダかといえばそうではない。そこには「余裕」という贅沢があるからだ。先月紹介したパンダのように、少ないパワーを使い切って乗る楽しさがある反面、このメガーヌRSのように踏めばいつでも非日常的なパワーと速度を得られる精神的な余裕に浸る楽しさもある。6速に放り込んだとき、エンジンの回転数はわずか2100prm。その先7000rpmから始まるレッドゾーンまでの長い、長い道のりは、運転者に大いなる余裕と安心感を与えてくれる。
峠やサーキットに持ち込めば、手に汗握る興奮が楽しい。日常生活ではロングツーリングでも平気でこなしてくれる。メガーヌRSは贅沢だ。
突然だが、クイズを出したいと思う。今回紹介したメガーヌRS、実はルノージャポンの広報車として使用されていた個体である。このクルマにはエンジンカバーと助手席のサンバイザーに4名分のサインが書かれている(写真参照)のだが、このサインが誰のものか分かるだろうか? ヒントは「ルノージャポンの広報車なので、きっとF-1日本GPにも行ってるんじゃないかなぁ……」である。さぁ、分かった方はぜひコメント欄に書き込みを。
PHOTO & TEXT/Morita Eiichi
2004y RENAULT Megane RENAULT Sport 2.0T
2005y RENAULT Megane RENAULT Sport 2.0T Trophy
全長×全幅×全高/4230mm×1775mm×1450mm
ホイールベース/2625mm
車両重量/1370kg
エンジン/水冷直列4気筒DOHC16V
排気量/1998cc
最大出力/165kW(224PS)/5500rpm
最大トルク/300Nm(30.6kgm)/3000rpm
さてさて、森田、すずきの、おまけコーナー。
画像のサインは誰のサインでしょう?
正解は私はたぶんでしか知らない。なので、それらしければ正解とします。(爆)
コメント欄に、お名前(ハンドル可)、お答えを書き込んでください。
(所定の欄にメールアドレスを忘れずに。コメント本文に書くと公開されちゃうのでご留意を。)
それらしいお答え先着5名様に、Lubrossさんご提供、 TopLube1000の試供品を、佐川急便メール便でお送りいたします。(紛失破損補償はありません。)
http://www.reno-auto.net/wp/archives/5002
その際に、当方よりご住所お伺いのメールを差し上げます。
迷惑メールと思って削除されちゃうと、次の方に繰り越しちゃう場合もありますのでご留意のほどを。
メールアドレスがない届かない場合も繰り越しますのでご了承のほどお願いいたします。
では皆様ふるってご応募のほどを、何卒よろしくお願いいたします。
むっかすぃすぐる、と思うので、ヒントをば・・・
たぶん、2006年のルノーF1と思われ、です。
サインは良く判りませんが、トロフィーは次壱モノだと言う事は判りました (^^;;
コメント消えたしまったみたいなのですが、連投でしたらごめんなさい。
細かいことは良く判りませんが、トロフィーは次壱モノだと言う事だけはヨクワカリマした (^^;;
そのとぉーりでございます。徳島の次壱、徳島の次壱、次壱で買ったら垢抜けた。次壱で綺麗な一台を、どうぞよろしくお願いいたします。
今日、オレンジのメガーヌの人に挨拶されました。んーん、少数派ですなぁ。
あ、ご近所かも?
①フィジケラ、④アロンソ なのかな?あとはチームディレクターか、極東担当者のサイン
なのか?
をー、んー、たぶん近い。あと一人確定したいですねぇ。
では、レギュラードライバー2名の他に、
テストドライバー兼リザーブドライバーが
1名いるので、コバライネンかなあ?
(字面が違うように思えるので)、それとも
2004年のチャンピオン時のドライバーで
2006年はトヨタに移籍していた、ヤルノ・
トゥルーリだったりして?
ふむふむ。では、あと4人!
あちこち調べた結果です。
① ジャンカルロ・フィジケラ
② フェルナンド・アロンソ
③ ヘイキ・コバライネン
④ 不明
をー!ありがとうございます!
さてこれで二人、あと三人!
いえ、あと1人ッス。
自分の買ったクルマに知らない人の名前が書いてあるのキモチ悪いので、
本気で調べたんですが④だけそれらしい人が見当たらなかったデス。
誰かF1詳しい人、教えてぷりーづ!
いやはや、すいません書いてあったもの、なので・・・
4は難物ですねぇ。。。
あと三人は賞品獲得者ですー。
“Tim” Denham ティム・デンシャムさんでは、なかろうか?
ありがとうございます。そ、それは、どちらさんですか?(無知)
足りない頭をフル回転させてググってみました。
Tim Densham,ベネトンからルノーに至る辺りのデザイナーですね。
さて、これであと賞品獲得者はあと2人です!ふるって焦らず急がずご参加を何卒です。
字面から非常にそれっぽいんで、私も疑ったんですが、
かの御仁のサイン画像が世に出回ってない(Google検索出来ない)んで、
確認できないんですよねぇ。
おなじことしてる。。。
そーなんですよねぇ・・・
T/P/B? 何から始まるんでしょうね? sも入ってそうで。。
おやすみなさい。
わからんですよねぇ・・・これが印鑑の代わりになるんだから、わかりやすくちゃ困る、のかなぁ?
世に出回ってないサインって事はめっさ貴重なのか?
助手席用のバイザーの予備買って、劣化防止に付け替えておいた方がイイのかしら?
・・・バイザーはともかく、エンジンヘッドはどーすんねんw
どっかに解体車があれば、譲って貰って換えて保管しておくって手も、ありんす。エンジンの上のは単なるカバーなので、なくてもよいかもだけども。
えーと、いちおー、9月末で”おまけコーナー”締めます。
今なら、ワシもそー思う、で貰えるチャンス!さぁみなさま奮ってワシもそー思う、か、新しい見解を何卒です!
では、おまけコーナー締め切りまして、TopLube1000をお送りします。
佐川メール便ですっ!
ありがとうございました!
ヤフオクでなんか落としたか?
と一瞬思ってしまいました。
燃料の添加剤なんんですねぇ。
ありがとうございます。
無事着いてよかったよかった。
燃料10Lあたり10ccほど混ぜるモノです。
よろしければお試しくださいませ。