ペダルつけちゃえばエーやん、ってのが性格的に許せない性。
ルノーのトゥインゴに、イージーシステムという自動クラッチシステムがあります。
巷では”壊れると高くつく?”から、通常のペダルをつけて普通のクラッチにしてしまう例が少なからず。
まぁそれはそれで選択肢の一つとしてはよいのではないでしょうか。
でも、私、性格的に、そのものはそのものなり、で使いたい性なので。(笑)
で、まず概略的には・・・
1. クラッチの断続は電動ポンプによって生み出された油圧を蓄圧器(アキュムレーター)に蓄えて、その油圧で行う。
2. 断続操作指令(コマンド)は、下記情報を総じて、各ギアに応じた断続速度で行う。
A. シフトノブに内蔵されるスイッチ これによりシフトノブを前へやるか後にやるかを拾う。
B. トランスミッションにある、ギア位置とニュートラル、バックを感知するスイッチ これにより現在どのギアを選択しているかを拾う。
C. エンジン回転数・車速・アクセル開度 いずれかかいくつかか、全てか 拾ってるはずですが、どれかはとりあえず未確認。
以上を以てイージーシステムが成り立ちます。上記を人間が操作するクラッチペダル、クラッチワイヤーに代えて装備し、概ね完璧に動作することによって、変速することによりクラッチが切れるイージーシステムが成り立ちます。
付随する事項として、トランスミッション自体は通常のマニュアル車(パック)と共通、クラッチ板等3点キットは同一、もしかしたらイージーの方が容量・厚みが大きいものになってるかもしれない。
同時に、全てのメカニズムが概ね正しい動作をしていないと、あらぬ部分に負担が掛かる。想像にたやすいでしょう。
どこかにトラブルを抱えていて妙に半クラッチが長い乗り方を強いていれば、クラッチは摩耗していきます。
これはイージーでなくとも、普通のMT車でも半クラッチを多用していればクラッチは摩耗し、滑ります。
イージーシステムは所詮機械なので、ある程度は自己で調整していきますが、初期のイニシャル位置等の調整を真っ当に施してやらないと、その後の摩耗状況に対処していけなくなる。
要は、中途半端で、動いてるからイイですって問題では、騙し騙しに過ぎず本来のイージーシステムとして動作できていない、に陥ってしまう。
手抜きは、許されないんですよ。簡単そうで難解なシステムになっているが故に。
手抜きして壊れるのは、それは壊れたと言うより壊したに相当すると、暴言ながら言えないとは言えない。
あとは、その動作ロジック。
- ニュートラル、始動時 ミッション:ニュートラル クラッチ:続
- 1速へシフト シフトノブを押す動作をトリガーとしてクラッチを断ち、1速へ入る。
- 1速 停車 クラッチ:断 上述のポンプとアキュムレーターの圧力でクラッチを切り続ける。
- 1速 アクセル開 長めの動作時間でクラッチを繋ぎ、半クラッチ状態を作り出して車は前進する。
- 2速へシフト シフトノブを引く動作をトリガーとしてクラッチを断つ、ヒトが2速へ変速し次第、クラッチを繋ぐ。この場合断続動作時間は長め。
- 3速へシフト シフトノブを押す動作をトリガーとしてクラッチを断つ、ヒトが3速へ変速し次第、クラッチを繋ぐ。この場合断続動作時間は短い。
- 4,5速へシフト 上述3速へのシフトと同じ動作を繰り返す。ギアを落とす場合も同じく、Vice-Versa 。• 停車から2速でアクセルを踏んだ場合 クラッチを繋ぐ。この場合断続動作時間は長め。たぶん凍結路等での使用を考慮して。
- 停車から3速でアクセルを踏んだ場合 警告ブザーが鳴ってシフトチェンジを促す
- 停車中に各ギアに入ったままの状態 ポンプとアキュムレーターの圧力でクラッチを切り続ける
上記から、ポンプとアキュムレーターへの負担を軽くして長持ちさせるためには・・・
- 停車中はできるだけギアをニュートラルへ。2速発進は必要時以外は避ける。
人間がクラッチ踏んでるときと一緒ですね。長時間踏みつけてると左足つります。(笑)
まぁ、こんな感じでしょうか。
考えようによっては、やっすーい車にこんなややこしいシステム積んだってのが、暴挙であり快挙。問題はやっすーい車だからかそのものなりの維持管理と使い方がされていない、のではなかろうかと。(暴言)
じゃあ、イージーがイカンかって言えば、イージーなりの乗り方してると、非常に面白く便利なシステムですよ。是非ご堪能ください。短絡的に考えちゃダメよ。
で、過去、2度のリコールによって、上述1と2-Bが対策されました。それに関する個人的見解。
1,に関して。
アキュムレーターを使うという構造上、アキュムレーターの消耗は避けられない事実。アキュムレーターとは圧力容器の中にゴム膜を張って、片側にガスを充填、反対側に圧のかかった油圧を入れてゆくと、ガスの反発力に相応して油圧が蓄えられる構造。産業機械やシトロエンのハイドロニューマチック、一昔前のABSシステム等で使われている。
が、その構造上、アキュームレーターの容量劣化、耐久性の問題で、消耗により定期交換が必要。
トゥインゴイージーの場合は、大雑把に言えば、ルノー側の想定では通常のクラッチの使用と同じ想定であったのか、日本でのストップアンドゴーが多い状況を想定していなかったのか、こと日本ではこのアキュムレーターの劣化が彼らの想定よりも早かったらしく、リコールという方法でその対策を行った、のではないかと。
2-A、に関して。
製品の耐久性の問題か設計上の熟慮不足か、当初からバックランプが点かない等のトラブルがあり、これもリコールによる交換となった。
上記2点に関しては、動作に不良があるとイージーシステムの警告ブザーが鳴ったり、始動できず、変速できずな症状を発現するので、判断は容易。
2-Aに関しては、割と軽視されている。構造上シフトノブの前後操作を感知しているのみで、シフトノブに力が加わっていない状態では導通せず、なので、ここに問題を抱えていても警告音等発せず、乗る分にはクラッチ操作が曖昧や乱暴になるだけで、乗れてしまう。が、シフトノブ内部のスイッチは樹脂でできているので、経年劣化やこじる引っ張る等の無理な力を与えたりすると、そのスイッチ自体、または軸部の樹脂が損傷して、シフトノブが空回りしてしまったり、抜けてしまったりする。当該シフトノブには2本の電極があり、これが正しく導通していないと、正しい動作をしない。
で、シフトノブをばらしてみると・・・
1. 上から、シフトノブの残骸。壊さないと取れませぬ。
2. その下、以下の部品の方向を規制している部品。これとシフトノブ本体で、ココ以下の部品の位置を固定している。
3. その下の傘お化けのような部品の上内部に、でっかいOリングが入っている
4. その下の電極がそのOリングの下にいる。この2本の電極の導通の有無で、シフトレバーの動きを感知する。
5. その下に、シフトレバー本体に固定”されるべき”部品。これが傘お化けに若干の遊びをもたせて固定されている。
5.が割れたり、内面のスプラインがなめると、シフトノブが空回りするようになる。そうすると実は4.も一緒に?廻ってしまい、正しいシフトの動きを伝えなくなる場合がある。また、電極の摩耗もあり得るかも。
ここまで分解するのにシフトノブ破壊は必須。で、割れた5.をなんとかしようにも、なめたスプラインは接着してもきっと保たない。
悩ましいな。割れちゃったら換えざるを得ない部品だ。
上記を踏まえた上で、イージーはイージーなりのつきあい方をしていけば、決して悪いシステムではない、と思いますが、如何か?